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昔、朝日飯豊の沢を共にやり、常にトップを譲らず、その溯る姿勢に深い肝銘を受けた
旧知の柚本さんから手紙が届いたのは大晦日であった。黒部川上の廊下溯行を最後
に散り散りとなったが、飯豊裏川と名の付く桃源郷で、柚本さんから頂いた「ラープ」は
「故旧忘れ得べき」と、二昔前の歳月を山わっしゃこに問いけ続けていたのである。
明けて5日「白山に登ろう」なるガイドブックを手にする。著者は昔より文才に長ける柚
本さんであった。ただたんに形式ばりのガイドブックでなく、紀行文風の語りかける文章
は机上にして白山を登らせるのである。また、この一冊から柚本さんの山の良さの味
わい方を高さから深さへと切りかえていくようになっていった経緯が察せられた。1988
年に発行された植野稔の著書「イワナに憑かれて」の件に「なみなみとウイスキーをつ
いでしまい、ベロベロになる。今日もまた、彼らはテントに寝ることを許されず、特注フラ
イの下で酔い潰れていた。」と。再びあの熱い日が来ることを夢見る新年である。