朝日連峰 祝瓶山


photo/horikosi



11月12日
喧騒の山から静寂の山へと変わる頃、地下足袋の山行は終わりを告げる。足袋仕舞
の山は、藪山を目論むも記憶ある直下のネマガリダケの藪は重荷で、奇特なパートナ
ーを求めれば、剛柔な登山を繰り返すH越さんに二つ返事を貰った。昨今の天気から、
山頂辺りは雪であろうとと予測し、是非なく地下足袋を捨て、スパイク長靴でクワズミ
平から通称カミナリ尾根に上る。ブナ林のヤブはおとなしく、カクナラ沢から来る尾根と
合わさる810mで腰を下させ朝食とした。先には灌木藪が武装し、小枝をへし折り、大
枝はひん曲げて行けば、稀に開く窓からは、視界も無く恨めしいが「藪は道なり」であ
る。「入り口の良い谷は深くなって悪くなる」は沢登りの格言で沢を尾根に例えればそ
の通りで、藪は密度を増しながら笹の壁とも笹の海とでも形容したいネマガリダケの
重囲に当面し最後の関門をこざけば、草木が狐色に枯れるヌルマタ沢源頭で藪抜け
をした。祝瓶山頂には、一足先に着いたH越さんが、雲のご機嫌を伺いながら360°の
パノラマを収めていた。人心地つき下山に取り掛かる頃、小国口から登って来た登山
者に、展望を譲り祝瓶山に踵を返す。ヌルミ尾根からカクナラ尾根と対峙すれば、登山
道の有難味を感じるも、裏腹に藪の興趣に浸っていた。クワズミ平付近では、徹頭徹
尾トップをやったH越さんに、ザックを打ん投げたくなるほどのキノコを採らせてもらい、
満足の祝瓶山であった。