再会を果たす

1986年 柚本さんと山わっしゃこ   photo/植野稔
自然遊悠学を主宰する植野稔は、50年にもおよびイワナを飽くなく追い続けていた。
イワナへの情熱を捨てた山わっしゃこを気に留め、石川に居を構えた柚本さんとの
再会の場に招き入れてくれたのである。愚老3者の六腑に酒が浸れば、足を沢へ
と走らせる。この上もない酒をしこたま飲み、山の書籍の中に寝る。
翌朝、一足早く起き、我々にシシタケご飯を炊き、コーヒーを挽いてくれた。おまけ
昼弁当まで持たせてくれた心遣いに感謝の念を懐く。それと裏腹に、これから山
足を入れる故、早く腰を上げろと促す。昔と変わらぬ物言いに、柚本さんと山わっ
は安堵し帰路についたのである。こうして植野、柚本、山わっしゃこの沢へ
じ目は開かれたのである。



     植野稔の自然遊悠学 

この道しかない春の雪ふる

昭和年代を登った山男達はもういない。その精神を受け継ぐしかる所もない。
もう少し渓谷の底をうごめくならば、この道しかない春の雪ふる』かな