飯豊連峰 疣岩山

                    
                    
                    







9月26日(日)
疎遠であった長坂登山道の記憶はおぼろげであるが、弥平四郎集落のたたずまいに、昔日の懐かしさを思い出す。四ッ沢から登り上がれば、マナツボ鞍部から熊狩りで実川側へ越した証を見る。道すがら大量のブナハリタケをザックに収め、大日岳の展望台と渾名される鏡山に辿り着けば一瞬、飯豊本山から大日岳の主稜線を見る。これより進む登山道は起伏に富むも足運びはよく、八ッ小屋尾根と合わさる上ノ越を通過させ、どこがピークか分からぬ巻岩山を搦んで行けば松平峠に接続する疣岩分岐で、僅か北側の巻き道を辿れば三角点が在るのみの疣岩山は一投足である。山頂より三国小屋を望むが今日は遠く、引き返す事とした。往路は、八ッ小屋尾根とし登ってきた道を上ノ越まで戻る。途中の登山道上でカモシカの交尾を目撃、一目散に消えた藪から唸り声が聞こえていた。ブナに平成四年八月、某他六名、新長坂登山道伐開と切り付けのある登山道を下れば祓川駐車場に着いたが、弥平四郎を経て四ッ沢までの林道歩きは長かった。

朝日連峰 大朝日岳












9月18日(土)
日暮沢小屋からさらに根子川沿いをさかのぼり、才兵ェ滝上に架かる朝日橋の袂から歩き出す。その橋を渡れば登山道は右岸に並行につけられており、見えぬ竜門滝は瀑音で存在を知る。登山道は唐突に左に折れ、谷分レまで喘登が続く。水平道は距離を稼がせ、ハナヌキ峰を通過すればサンザノ清水で、小朝日岳に向かう励みとなる。たいして水筒も減らぬまま「キジ場の下の水は甘い」と言う説のある銀玉水で水を入れ替え、腰を据えれば、正面に急峻のヨコフッッケ沢が流れを落としていた。この沢は寡聞にして溯行記録は見当たらないが、縁ある山岳会が1ヶ月前に落としたと聞き及ぶ。ガス湧く主峰大朝日岳は視界もなく頂を踏むのみでそそくさと後にし、小屋番の方と二言、三言を交わす。中岳への途中、雑誌から抜け出したような山ガール、山ボーイに時の移りを感じつつ、中岳肩の慰霊碑に差し掛かれば、小屋番の予想通り雨が落ち始めた。断続的に降り続く雨と日差しの短さが気にかかる故に西朝日岳本峰は辞した。さらに主稜を真北に進めば御坪山辺りからガスが飛び、昔、沢を溯り辿り着いた袖朝日岳を見る。竜門山で縦走路を外れ、熊糞山、清太岩山を下れば日がとっぷりと暮れた日暮沢小屋に辿り着いた。

朝日連峰 祝瓶山












9月6日(月)
沢用ザックとハーネス、ガチャモノを引っぱり出し、沢登り仕度をするのは何年ぶりであろうか。ワンディで溯れる沢を選択した結果、昔、登下降を実践済みの祝瓶山南面、コカクナラ沢とした。履き古した沢足袋は心許ないが終わってみればフリクションが効き快適に溯れた。今日も暑いので進んで水線を求める。コカクナラ沢最大の滝20mは右岸の草付きを巻き、途中、下降の折の記憶が過ぎる。地元の山人は、ここら辺りまで山菜の取り場とし、毎年、大漁との事である。溯行の合間、腰を落とせば傍らにダイモンジ草が心を和ます。さらに現れた滝も巻きで通過、上部は穏やかなゴーロ歩きで退屈するも、登山道1270m辺りから下る沢を右に見送れば、岩壁帯下部のルンゼは天を突く。直下岩場は落書きのようにマーキングが塗り立てられ、遣った者の神経を疑う。沢足袋から地下足袋に履き替え、よく道刈りされたアカハナ尾根を下れば、戻った沢心に北叟笑む。