飯豊連峰 飯豊山











7月5日(日)
山の初めは息衝く。長之助清水が喉を過ぎれば山に入れた安堵の胸をなでおろす。山の源流である大日杉小屋は記憶ある昭和40年代と大きく様変わりさせ、傍らの大日沢だけが昔と変わらず坦々と流れているだけである。ダマシ地蔵を巻き、滝切合に進めば東滝からくる不遇の登山道は藪畳である。ここよりヒメサユリ、ニッコウキスゲ等が咲き乱れ、苦しさも消えうせる。御沢の雪渓登りは地下足袋ゆえ足が凍て付くようで閉口した。切合小屋で一本立て、急き立てられる様に飯豊山へ向かう。道々で多くの登山者と行き交うも、前ハチマキでナタを下げ、地下足袋を履く山わっしゃこの出で立ちは場違いの感を否めない。山頂に立てばガスは展望を断ち続け、下山する方が記念写真を取って下さると善意に収まる。ここまで来れたご褒美のミカンの缶詰を一人楽しみ踵を返す。帰り道は三国岳経由とし切合小屋で数本のタバコをくゆらし、地下足袋のツメを嵌める。1年ぶりの三国小屋で管理人の大関さんと親しく話をさせて頂く。地蔵山では路傍のおじぞうさんに手を合わせ、平頂の牛ヶ岩山を経て、真新しく道刈りされた五段山を下れば暮れなずむ大日杉小屋に着いた。