飯豊連峰前衛 栂峰





















9月1日(月)
待ち望んでいた上天気の日、飯豊前衛の栂峰へ行く。今回、連れ立つ方は「葉山の自然を守る会」のNさんで、2度の山行でしかないが、山わっしゃこと同じ山行スタイルを好む山慣れした山女と見てとれた。我々の予定は大桧沢支流思案沢を降り飯森山へとの思惑である。2人共々、脚絆と地下足袋で足元を固め天照大神に手を合わせる。道すがら通常では流れを見ない沢筋は太い流れを出しており一抹の不安を覚える。1ヵ月ぶりの足どりは重くNさんのペースを乱し続けた。Nさんは、そこここに祀られた神々の名をメモしながらの登りである。1400m辺りから展望はおむもろに開き振り返ると飯豊山が峙つていた。蔵王権現で腰を下ろせば長雨後の大桧沢源頭のガレ場が頭を過ぎる。増水も早いが引きも早い沢であるも地盤の緩んだ浮石が第一に懸念され危難を察知すれば事前に避けるのが沢登り心得である。栂峰山頂は我々の貸切と思いきや、夫婦らしき2人連れが登って来た。果物等をいただき暫し雑談をすると、男の方は朝日・飯豊に非常に詳しく沢や藪にも興味が深いようで話が弾んだ。参考にと思案沢の落ち口に案内をする。途中、4人パーティーと交差するも何と賑やかな平日であろうと我を棚にあげ感心しきりである。落ち口にて2人組に別れを告げネマガリタケ藪を漕ぎ沢床に降り立つ。飯森山は次回の楽しみと諦めていたので熊の真新しい糞があった所で偵察を止め引き返す。後は、口と地下足袋が滑る下山であった。こぎれいになった後、「葉山の自然を守る会」が中止に追い込んだ大規模林道の成れの果てを見に行く。大規模林道は、山わっしゃこが傾倒し続ける山々の狭間を走り、岩羽国境尾根の一角を刳り貫くという実に醜いもので、福島県側に出れば昔の儘には戻らないトンネルと橋が空しくあるもののそれに負けじと飯豊の山は緑深く、そし高い連なりを見せ眼下の大規模林道を進めた愚か人を戒める如くそこに重々しく鎮座してあった。この林道の行き止まりをまのあたりにすれば、すべからく、この結末であろう。今さらながら自然と対峙する姿勢を学んだ一日であった。